採用のズレは社内から始まっている

採用担当者だけが説明に困っているわけではない
求人を出しても応募が集まらない、面接で魅力を伝えても候補者の反応が薄い。そんなとき、「採用担当者の伝え方に問題があるのではないか」と思われたことはありませんか?採用担当者に求人票の修正や面接の改善を任せても、内容がなかなか定まらないことがあります。「もっと自社の魅力をうまく伝えてほしい」と感じる経営者の方が多いのではないでしょうか?
しかし、採用担当者の表現力だけを直しても、採用は安定しません。社内で仕事や会社について使う言葉がそろっていなければ、担当者は何を基準に伝えるべきか決められないからです。
よくあるのは、経営者は「挑戦できる会社」と話し、現場責任者は「決められた仕事を正確に進める会社」と説明する状態です。どちらも間違いではなくても、候補者には別の会社の話に聞こえます。
また、「主体性のある人がほしい」という言葉も、社内で意味が異なります。自分で仕事を見つける人、指示を理解してすぐ動く人、周囲を巻き込む人では、求める人物像も面接での評価も変わります。
社内の言葉のズレは候補者に伝わる
会社の中では、同じ言葉を使っているだけで認識が合っているように見えます。「成長」「裁量」「風通しのよさ」「安定」といった言葉は便利ですが、人によって思い浮かべる状態が違います。その違いが表面に出るのが採用です。
求人票、会社説明、面接、職場見学で語られる内容が少しずつ異なると、候補者は「何を信じればいいのだろう」と感じます。候補者が見ているのは、魅力的な言葉の多さではありません。会社の説明に一貫性があり、自分が入社した後の働き方を具体的に想像できるかどうかです。
なぜなら、候補者は社内事情を知らないため、接点ごとの言葉や態度をつなぎ合わせて会社を判断するからです。
担当者によって説明が変われば、入社後も方針が曖昧なのではないかと受け取ります。ここで大切なのが「候補者目線」です。会社が何を言いたいかではなく、初めて聞く人が同じ意味で理解できるかを基準に言葉を見直します。
採用で起きるズレは、社外への発信だけの問題ではありません。経営者、採用担当者、現場責任者の間にある認識の違いが、候補者とのやり取りを通じて見える形になっているのです。
魅力を増やす前に言葉の意味を合わせる
最初に行うべきことは、採用向けのきれいな言葉を増やすことではありません。自社が普段使っている言葉について、何を指しているのかを確認することです。たとえば、「若手が活躍する会社」と言うなら、どのような仕事を任され、誰が支え、何をもって活躍と呼ぶのかまで話します。
具体的な行動や場面に置き換えることで、「言葉の定義」がそろいます。このとき、経営者の説明を社内に覚えてもらうだけでは足りません。現場から見た実態と経営者が目指す姿を分け、現在できていることと、これから変えたいことを混同しない姿勢が必要です。
次に、採用したい人を表す言葉を見直します。「明るい人」「素直な人」「コミュニケーション力がある人」といった表現だけでは、見る人によって評価が変わります。
どのような場面で、どのような行動を取れる人なのかまで言葉にします。これが採用における「判断の軸」になり、面接官ごとの好みや印象だけで評価する状態を減らします。
なぜなら、人物像を性格ではなく行動で捉えると、面接で確認すべきことと、入社後に期待することがつながるからです。採用基準は、選考のためだけではなく、任せる仕事や育成の考え方まで含めて整えるべきです。
その次に、求人から面接までの言葉をつなげます。求人で「裁量がある」と伝えるなら、面接でも任せる範囲、相談の仕方、決定できないことまで説明します。良い面だけを同じ表現で繰り返すことが、一貫性ではありません。仕事の難しさや会社が抱える課題も含めて、誰が話しても事実関係が変わらない状態をつくることが、「社内の共通言語」です。
最後に、言葉を固定された正解にしないことです。事業や組織の状態が変われば、任せる仕事や求める役割も変わるため、採用活動を通じて生じた違和感を社内の対話に戻します。
採用の言葉は経営の考え方を映している
採用がうまくいかないとき、求人媒体や面接手法を変えることに目が向きます。しかし、その前に確かめるべきなのは、自社がどのような会社で、誰に何を期待し、どのように働いてほしいのかを同じ言葉で話せる状態かどうかです。言葉がそろうと、採用担当者は会社をよく見せる表現を探し続ける必要がなくなります。自社の事実と考え方を、自分の言葉で候補者に伝えられるようになります。
候補者も、複数の社員から一貫した説明を受けることで、「ここなら納得して働けそう」と判断できます。惹きつけるとは、耳ざわりのよい表現で期待を高めることではなく、入社後の現実を理解できる材料を渡すことです。
社内で言葉をそろえる目的は、全員に同じ台詞を話させることではありません。立場ごとの見方を残しながら、会社として変えてはいけない事実と考え方を共有することです。
採用は、社内の認識のズレが表に出る場です。
だからこそ、採用で言葉を整える取り組みは、既存の社員が仕事の目的や期待される役割を理解し、同じ方向へ進める組織文化づくりにもつながるのです。
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